「この世界は…
この世界は…糞だ
あまりにも汚いものが溢れかえった肥え溜めだ
ロクなもんじゃ、ない」
「………」
男は何も応えない…。
余りにもハッキリとした意見に、気分を害したか?と思ったが、違った。
「素晴らしい」
フルフルと小刻みに震える男は、感動して、言葉を失っていたらしい。
「クツクツクツ
その若さで、よくもそこまで、美しく汚れたものだ」
くぐもった低い笑い声を上げ、男は心底愉快そうに唇の両端を吊り上げ、更に言葉を続ける。
「そうだ
君の悟った通り…この世界は糞だ
ただ惰性によって存在している唾棄すべきもの
私もソレに気付いた時、心底落胆したものだよ…
何故、こんな世界に生まれてしまったのか…とな」
「………」
「君の目を一目見た時、一瞬で気付いたよ
君は私と同類だ」
両手を広げ天を仰ぎ、芝居がかった大袈裟な動作で、男は演説を続ける。
「絶望し、挫折し、後悔し、排斥し、拒絶し、嫌悪し、憤怒し、屈辱を知り、世を憎み、ありとあらゆるものを憎悪した者だけができる瞳だ
ゴミ溜めの中に生まれつき…
喰らうことしか能のない豚共に囲まれ生き…
汚されつつも尚、その美しさを保っている…
そんな君こそが、王者となるに相応しい!」
「王……者…」
聞き慣れない言葉だった、だってそうだろう?あまりにも自分と正反対な言葉だ。