肉体と精神が摩耗する日々に、突如として変化が訪れる。
「燕、今日からこの旦那が御主人様だ
しっかり奉仕するんだぞ」
「はい…
…よろしくお願いします、御主人様」
「フム、では貰っていくぞ」
そう、良い値がついたので、一晩の相手としてではなく、本格的な“奴隷”として買われたのだ。
よかったかもしれない、客の中にもやはり、嫌なタイプ、マシなタイプがいる。
僕を買ったこの日本人は、見た感じマシなタイプに思えた。
馬鹿げた高級車で連れて行かれたのは、大きな屋敷の、何もない殺風景な部屋だった。
そこにたどり着くまでは終始無言だった男が、着くや否や、僕に語り掛けて来た。
その声はとても低く、何物をも飲み込む深い深い闇のように沈み込む重低音で、僕の心に、深く深く染み透った。
「この世界をどう思うかね?
遠慮はいらない、【本音で答えたまえ】」
その男が発した言葉は、妙な説得力、いや、強制力があった。
客の前では自分を出すな、と身体に教え込まれていた僕が、驚く程アッサリと、素の自分を見せてしまう程に…。