「貴様………
己(オレ)の一打を受けて立ち上がるとは…」

「ん?ああ、確かにキッツイ一撃だったけどな…
たった一発でやられるなんて、ヤワな鍛え方はしてないぜ」

驚く燕を尻目に、大きくノビをして、ダメージを確かめる亮。

「しっかし、凄ぇ一発だったよ…
今まで受けて来た中でピカイチだな…
……ク…ククク」

「…なんだ?
何がおかしい!?」

「いや…、やっぱ駄目だ
殺気ムンムン出してやり合うなんざ俺らしくねぇ
アンタみてぇに強い男に会うと、嬉しくってね、つい笑っちまう
堀田にゃ悪いが…楽しませて貰うぜ」

亮が強敵を前にして、初めて構えを取る。

身体能力だけで、相手を捩伏せるに足る戦力を有する亮にとって、構えることは稀だ。

真に強敵と判断した相手にだけ見せる“構え”。

レの字の形に足を置き、膝を曲げ腰を沈め、半身になる。

順手は自然に開き手の平を地面に向け、逆手は圧拳にし、地面に水平に腰元に構える。

「貴様…何の冗談だ!」

「俺は至極真面目だぜ」

その“構え”は、強靭な下半身がなければ、構えることすらできない、八極拳独特のものだった。