天然の決闘場崩山、その頂上で佇むは一人のみ、つまりは…勝者。
「強いと聞いていたのだが…
所詮は匹夫、王者の敵ではなかったか…」
一人立ち尽くす燕の視界に、既に亮の姿はなかった。
それほどまでに、強烈な一撃…。
「八極とは…、大爆発のことだ」
接近戦においての安定した爆発的破壊力こそが八極拳の売り。
人一人、視界から消すことなど、八極拳士には造作もないことだった…。
「八極拳士に二の打ちいらず
一つ打てばこと足りる」
八極拳の在り方を、既に視界にはいない敵に向かって語る燕。
「………」
気構えを解き、更には構えを崩し、踵を返して山を下らんと歩き出した燕の背中に…
「オォーイ
どこ行く気だ?」
「っ?!」
バッ!と振り返った燕の目に映ったのは…「イチチ」なんて言い腹を摩りながら…こちらへと歩いて来る、ランニングシャツのマッチョの姿だった。