さながら、猫科の獣のように体をしならせて、燕へと飛び掛かる亮。
「オラァ!!」
そのまま、大振りで、ただただ力任せに、燕の顔面を殴り付けた。
「破っ!!」
「なにっ!?」
殴り掛かった、攻撃した側の筈の亮が、逆に弾き飛ばされる。
亮のパンチの威力は、常人の想像を遥かに上にいって、更に斜め上にいくものだ。
例えどんな人間だろうと、亮のパンチ力で顔面を殴られたら、無事では済まない。
それを…無事で済んだ等というレベルではなく、燕はあまつさえ弾き返した。
「……発勁か…」
「ご明察
一撃で悟るとは…ますます期待できるな」
体内に流れる氣、それを、攻撃する時相手に流し込むことを、発勁と言う。
本来は攻撃術だが、それを防御に応用したのだ。
相手の攻撃が当たる瞬間、その部位から発勁を行うことによって、相手の攻撃の威力を殺す。
今の場合は、亮の馬鹿げたパンチの威力よりも、燕の発勁の威力が勝っていたというわけだ。
「………ん?」
燕の唇の端から、ツ、と、血が一滴流れ落ちる。
「ハハ、見ろ、血だ
血を流すのは久しぶりだよいいなぁ、お前いいよ」
恍惚の表情を浮かべる燕から何かを感じ取ったのだろう、警戒心を強めた亮は、燕から離れ、やや距離を取る。