「アンタ………が」
「耳が良い友人がいてね…
日本から凄腕のスイーパーが己を倒しに来るという話を聞いてね
これは挨拶を…と思ったんだが…
フー、外れを引いてしまったようだ」
人の腕を捩り折るなんていう真似をしておきながら、なんともノンビリとした声で、まるで友人と世間話でもするかのように、普通に話しをする。
その、余りにも“人を痛め付けること”に慣れてしまっているこの人物の危うさに、貫の背筋が凍る。
「そうだね
こうなったら君に、“手紙”の代わりになって貰おうかな…」
ニコニコと笑いながら近寄る美人。
貫は、逃げ出さなくてはならないことを、頭では理解していたのだが…体が全く言うことを聞かなかった。
それは、大蛇に捕食される寸前の蛙に酷似していた。
「っ!!
ギャアアァァァァ!!!」
絶叫を上げる貫。
しかして、こんな状況に置かれながらも、貫はまだ、燕の美しさに魅了されていた。
もしかしたら、この男の真の恐ろしさは、人を惹きつけて止まない、この美しさにあるのかもしれない、と、薄れゆく意識の中で、貫はボンヤリとそう考えた。