「あ゛〜〜〜………」
「っ!!」
頭の上に感じた手の気配に、ビクッ!と身を縮める石姫。
叩かれると思ったのだろう、少女は猫のように身を竦め、また、微かに震えていた。
「!………?」
だが実際は、亮のゴツく大きな手が、ポフッと乗せられただけだった。
「………?
わっ、わわっ!」
ワシワシワシ〜!っと頭を撫でられ、グシャグシャになった髪のままで、キョトンと見上げる石姫。
柄にもないことをした亮が照れ顔で、左手で顔をポリポリと掻いていた。
「その………なんだ
結果としては猫、助けたわけだし、次から気をつけりゃオーケイだ
………
…怒ったりして悪ぃ」
「………ううん
別に…いい………です」
「ん?
膝、怪我してんじゃねぇか…」
「あ…」
「オラ、手当すっからそこ座れ」
「別に…」
「座れ」
「…はいです」
救急箱を持って来て、消毒をする亮。
「染みるぞ、痛かったら言えよ…」
「ん………」
石姫は少し顔を歪め、軽く呻きを漏らしたが、痛みを訴えたりはしなかった。
亮が手際よく包帯を巻き、無事に手当が終了する。
「うし、終わりだ」
「…どうもです」
「………」
「………」
微妙に気まずい沈黙。
「…ん、そういやその猫、どうすんだ?
所長は確か、動物を見た瞬間思わず“根性焼き”する位の動物嫌いだろ?」
「………はいです
…だから…困ってるです」
「う〜ん、どうすっか…」
「困ってるです…」
「つか、そもそも野良なのか?」
「困ってるです」
「ん?うん、それはわかっ」
「困ってるです!」
「………」
小猫を抱いたまま、ズイズイと寄って来る石姫。
…いかに鈍チンの亮にでも、石姫が言わんとすることが理解できた…。
「困って…るんです」
「………」
(世話とか面倒だけど…ま、いっか)
「あ〜〜…
…ヒメ………その猫……」