「おや?
…へぇ、これはこれは」
まんまと仕事を終えた怪盗が悦を隠せず、さぁこれから一演説…といったところで、突如後ろから話し掛けられ振り返る。
そこには、やたらと筋肉質な、ランニングシャツ一枚の男が一人。
人が近付いたら気配でわかる、そう鍛えられている怪盗ジャムにとって、いるはずのない場所に、その男は立っていた。
「…驚いたよ、私に気付かれることなく、ここまで接近するとは…」
「ヘッ、ただ普通に歩いて寄っただけだぜ?なんちゃない
フン、あまりに隙だらけだったからな…
後ろからブン殴ってやってもよかったんだが…」
言葉の途中で、男は、口の端だけで小さくニヤリと笑い、言葉を続ける。
「…それじゃあ面白くねぇだろう?」
「…なるほど、これは楽しめそうだ…」
顔を覆うマスクに隠されていない彼の口も、ニヤリ、と小さく歪む。