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短針と長針が、綺麗な90度の角度を描き出す時…

ボーン…ボーン…ボーン………

美術館にある大きな置き時計が、時刻の到来を知らせる。

鳴る鐘の音は確かに9回。

そう、怪盗の予告した時間が到来したのだ。

………

「とても…いい夜だな…
夜空を覆う満点の星、それらの輝きをも凌ぐ地上の星々…
どちらも、凄く美しい…
だが、今宵今晩この時だけは、彼らとて、スポットライトの役割に過ぎない…
今宵、最も美しく輝くものは…
この私!!
怪盗ジャム!参上!
アァー〜ッハハハハ!」

9時ジャスト時間通りに、いつの間にか美術館屋上に現れた件の怪盗。

たなびく金髪、痩せ過ぎとも取れるその体躯は、その実、極限まで絞り込まれた肉の結晶。

高笑いをする彼の脇には“幻の聖杯”今宵の彼の獲物が抱えられている。

そして、その怪盗にあるまじき恰好は…

………

「くっ…いつの間に盗んだんだ!?」

「堀田!そんなことより…あいつ、タ○シード仮面のコスプレしてるぞ!!」

「ちょっ!所長!
そんなメジャーキャラ出したら危なかろうもん!
連載中止になるバイ!」

「ハハハ、故郷(くに)の言葉が出てるぞ
まもちゃ〜ん」

「誰がまもちゃんか!
ああもう!こん人は!」

………

「アァー〜ッハハハハ!
親愛なる無能な国家の飼い犬君達!
見ての通り、幻の聖杯は頂いたよ!
今回も、私の勝利というところかな?
アァー〜ッハハハハ!」

「………へっ
馬鹿笑いしてんなよ?
ニイチャン」