◇
「いやぁ、いいもん見させて貰ったよ…」
貫の一撃を受け大の字になっている一輝に、軽い口調で響子が話し掛ける。
「動けるのか?」
「いや、当分は無理だな…」
「ま、先に気絶したのはあいつだし、先に目が覚めたのもアンタだ
今の喧嘩は、アンタの勝ちだな」
「いや、能力覚醒したてであそこまでやったのだ…
この勝負…私の負けだな」
「ま、でもアンタは演説で力をかなり消費してたし…
引き分けってことでいいんじゃねぇの」
「………」
シュボッ、と、響子は煙草に火を付ける。
「吸うかい?」
「戴こう」
シュボッ
「フーーー」
「フーーー」
「驚いたよ…」
「何がだ?」
「息子とは…知らぬ間に強くなっているものなんだな」
「確かに…アンタの息子、なかなか面白いな
あの爆発力はたいしたもんだ…
ま、火事場の馬鹿力だろうがな」
煙草をくわえたまま、響子は白い歯をニッと見せる。
「なぁ、黛…つったっけっか?
アンタ、アレ、一度捨てたんだろう?
私にくれないか?」
倒れている貫を指差し、そう言う。
「元々私のものではない、好きにしてくれ…」
「そうか、じゃ、貰ってくぞ…
ふふふ、鍛えがいがありそうだ…」