拳を受けよろめき、たたらを踏んだのは、貫の方であった…
「クツクツクツ
やはり、勝利を手にするのは、この私だ!
貴様のように脆弱で貧弱な生き物が、私に勝てる筈がないだろう!」
「うるさい…
オイは…オイは負けんさね!」
顔面に拳を叩き込むも…
「貧弱!貧弱ぅっ!」
全く効いていない。
「名は体を表すという
名前、そのものの存在を定義付ける言の葉…
私は黛という裏の家に生まれながら、一輝という、最も輝かしい名を与えられた…
裏と表
闇と光
陰と陽
相反する二つの属性を併せ持って生まれた私は、単一の個人で完全な存在なのだ
他者の補完なしでは生きられない貴様らとは、土台、格が違うのだよっ!」
「へっ、そんなのは、ただの思い上がりさね…」
「なに?」
「アンタみたいな奴の…どこが完全な存在だ
自分の家族すら守れない人間が、どうして世界を変えられると思う!
アンタは、ただ賢しいだけの凡人さね…オイと同じ」
「フン、何を言うかと思えば…
見ろ!
現に、世界は姿を変え始めている
これが私の力だ、貴様とは違う!」
「もう、何を言っても無駄…か
凝り固まった妄念は、一度砕かないと駄目ってことか」
貫はそう言うと、低く構え、身体を大きく捩り…右拳を後ろに大きく引く。
「オイの全てを込めた一撃で、アンタの想いを砕く!」
「………
クツクツクツ
いいだろう
ならば、私は貴様のその想いを打ち砕こう!」
一輝もまた、身体を大きく捩り、右拳を大きく引く。
戦いの終わりを告げる一撃。
今正に、貫はそのか細い肩に、世界の命運を背負っていた。
どちらが勝つにせよ、間違いなく次の一撃で決着がつく。