二人の殴り合い、意地の張り合いは、数を重ねるにつれ、衰えることは全くなく。
むしろ、戦いが長引くのに比例して、段々と激しさを増していった。
思い切り身体を捩曲げて、十二分に遠心力を付けた一撃を、貫が顔面に叩き付ける。
それを全く意に介さずに一輝から放たれたリバーブローが貫の肝臓に突き刺さる。
皮が裂け、肉が爆ぜ、骨が軋み、血が噴き出して尚、二人は一向に休まない。
全身が心臓になったように波打ち、また、人体では有り得ない熱を持ち始める。
スピーディー、かつ力強い二人の戦いは、加速度的に激化の一途を辿っていく。
グチャリ…という、鈍器で肉を殴る音が鳴り響く。
「ま…だまだぁっ!」
「小賢しいわぁっ!」
互いに一歩も退かない、我慢競べ意地競べ、二人は今、世界で最も憎み合う親子であり、そして、世界で最も近しい親子だった。
殴り合いはノンヴァーバルコミュニケーション、非言語交流。
二人は今、急速に互いを理解し始めていた。