◇

「なるほどね…」

「「っ!?」」

「これが、骨法の徹し、か
初めて喰らったが…
こりゃ、身体で覚えるにゃちとキツめだ」

完全にKOされ、廊下に突っ伏した筈の男が、ムクリ、と、何事もなかったかのように立ち上がる。

「あの一撃を受けて…
立ち上がる、だとぉ?」

骨法使いが驚嘆の声を上げる。

「どんだけキツイ一撃でもよ、一発じゃ〜やられねぇよ」

驚く骨法使いに、ヘヘッと笑いながらそう答える。

「フン!
ならば、今一度倒すまでよ!!」

空手家が真っ直ぐに突進し、中段正拳突きを放つ。

それを躱すことなく、腹筋で弾き返す。

「呼おぉぉぉぉぉぉ!!」

「っ?!
それは三戦!?
それにこれは、息吹!?」

「チェストォッ!!」

驚く空手家の顔面に、正拳突きを叩き込む。

亮が取っている構えは、三戦(さんちん)という空手の構えの一つで、揺れる船の上で考案された、バランスのよい立ち方だ。

内股を締めて立ち、金的を守り、チンクチ――筋肉や関節を締めて堅くする、剛体法のこと――をかけて、打撃に耐える。

また息吹とは、空手独特の呼吸法で、その効用は様々である。

三戦は、近距離戦用の一撃必殺の構え。

自分の身体を的として打たせ、その隙にカウンターを決めたというわけだ。

空手家は壁に叩き付けられ、したたかに後頭部を打ち付け、気絶した。