「逃げてっ!」

言葉とは逆に、匠に対して、見事な攻撃を繰り出す美柑。

彼女は、傭兵として軍隊格闘術も仕込まれており、その技術は一流。

そして、特殊技能《能力限界突破(オメガ・ビオメハニカ)》による、常人の数十倍の身体能力が合わさり、その危険度は、むしろ武器を持っている時より上かもしれない。

一方匠も、幼い頃から執事としての英才教育を受けており、無駄のない動き。

格闘技というよりは護身術に長けていて、その体術には目を見張るものがある。

美柑の攻撃を、ギリギリで躱す匠ではあるが、やはり基本性能が違うのだ、徐々にだがダメージを受けていく。

ましてや反撃等している余裕はない。

「………くっ」
(今はとりあえず防御に専念して…突破口を見つけ出す!
なんとかして怪我をさせずに大人しくさせないと…)

そう考える匠だが…

「………?」

美柑の様子がおかしいことに気付くまでに、そう時間はいらなかった。

美柑の肩からの出血、落下時に怪我したのだと思っていた。

だが、動けば動く程に、彼女の怪我は増えていく。

「まさか…」

美柑の身体に起こっていることは、ズバリ、オーバーヒートだ。