◇
「クツクツクツ
クッ…フッ、フハハ!
アァーッハハヒャハハハハハハハハハフヒヘッハハハハハッハハッハッハハッ!!!」
一輝が笑う。
今までのような噛み殺した笑いではない、腹の底から、己の幸せを訴えている。
一輝が笑う、笑い転げる。
コンクリート作りの屋上を、所狭しと笑い転げ回る。
思いきり転げ回るが故に、床で頭を打ち、腕を打ち、肩を打ち、脚を打ち、背中を打つ。
痣ができ血が噴き出しても、一輝は止まらない。
全身で喜悦を表現していた一輝が、突如、跳び上がった。
着地したのはビルの屋上の縁、後数cmでもズレていたら落ちていた、そんなギリギリの場所。
「〜〜〜!♪
〜〜〜〜!♪」
一輝は上機嫌で、まるで指揮者のような動きをしながら、ビルの屋上から、次々と暴動を起こす民衆を眼下に見下ろす。
一輝が指揮するのは、世界中の民衆という名の犯罪者達。
そのオーケストラの見苦しくも美しい演奏を聴き、一輝はこれ以上ない幸福を感じていた。
《強制言語(ザ・ワード)》は耳にではなく、魂に訴えかける能力だ。
例え言葉が通じずとも、世界中の人々は、一輝の言を理解し、そして、導かれた。
「〜〜〜!♪
〜〜〜〜!♪」
鼻歌を歌いながら、指揮を続ける一輝。
遂に達成した悲願、初めて味わう至福の時。
その、至上で至高な甘美な一時を…
「………おい」
あろうことか、邪魔する奴が現れた。