男の長い演説が終わった後しばらく、世界は静寂に包まれた。
ありとあらゆる音が、世界から消えた。
地球の長い歴史の中で、こんなにも静かな時は今までなく、そして、これからもきっとそうだろう。
一体どれだけの時間、世界から音が消えていたのか…。
人によって、それは数秒のことにも思えたし、また、気が遠くなる程に長い時間にも思えた。
そんな悠久の静寂を打ち破ったのは…
ウオオオオオオオオオオオォォォォォッ!!!!!!
地球の…いや、世界の上げた雄叫びだった。
もし、宇宙人が存在していたとしたら、地球が震え、雄叫びを上げる姿を見たことだろう。
「………、、、!!!」
その雄叫びは一輝の耳にも入り、一輝は、その喜びのあまり、笑顔とも怒顔とも悲顔ともとれる顔をして、
歓喜のあまり泣きわめいた。
人々は程度の差はあれど、皆一様に、思い思いに暴れ出した。
悲鳴、打突音、笑い声、地響き、雄叫び、爆発音、嬌声、怒号、喘ぎ声…。
それら全てが混ざり合い生み出される混沌の不協和音が、一輝の耳に心地よく響く。
暴れているのは、民衆だけではない。
一輝が、この日この時の為に準備していた、人々に犯罪を促す為に世界中のあちこちに仕込んでおいた、優秀な人材、手駒達、混沌の種。
彼らもまた待ってましたと言わんばかりに、思い思いに暴れ始めた。