………

「…ねぇ、まだ…ですか?」

「ちょい待ち」

普段、ペットショップになんてまるで興味がない亮、場所なんて知る筈がなく、なかなか目的地に辿り着けない…。

家を出てから、既に1時間が経過していて、上のやり取りと全く同じことを、既に17回はやっている二人であった…。

………

「…ねぇ、まだ…ですか?」

「ちょい待ち」

――これで18回目だ。

「あ〜もう、うるせぇな!
これでも舐めとけ!」

オラ!と、やや乱暴に少女に飴玉を渡す。

「キャンディ!」

早速、嬉々として包み紙をクルリと外し、口の中でコロコロと舐め始める。

「〜〜〜♪」

「〜〜〜!」

嬉しそうに飴玉を舐める少女の横で、額にシワを寄せながら、亮は地図と血眼になって格闘していた。

ヒュンッ!

「よぃっと」

「ぬぉっ?!」

いきなりだった。

攻撃の瞬間まで完璧に気配を絶って亮の背後まで近付き、駿速の上段廻し蹴り。

それを全く見ずに、蹴り足をわしづかみにして投げ飛ばした亮に対して…男は驚嘆を漏らす。

なんとか受け身に成功した男は、ゆっくりと立ち上がった。

「今のに対応するとは…やるな」

突然攻撃を仕掛けてきた男は、不意打ちをしたことを悪びれもせず、素直に感心して、亮にそう告げた。