「キャン……………
ディ………………」

「……?」

「キャンディ…………」

男が握り締める飴玉を、どこかボーッとした目で見ながら、少女は言う

「お父様がね………
2つしかくれないの……………キャンディ…
私は…たくさん欲しいのに…………」

男の反応を全く気にせず、少女は続ける。

「いつもそうなの
キャンディ大好きなのに…………
お母様はね…いないの…
キャンディ………」

今までずっと、こんなところで幽閉されていたのだ。

精神に何がしかの影響が出ない筈がない。

男は少女の内に潜んでいた、地雷を踏んでしまったようだ。

今にも砕けてしまいそうな危うさを感じ、男は我慢できず、少女の両肩を掴み…

「お姫様
俺がキャンディを山ほど買ってやる」

咄嗟にそう告げた。

「ホント!?
ホントに!?」

「好きなだけ買ってやるさ」

飴玉を少女に渡し、危険過ぎるやり取りを乗り切ったことに、男は安堵していた。