「あ〜〜〜その…アレだ
俺と一緒に、ここから出て行こうぜ」
「………」
「………」
(…や、やっちまった…)
頭の中で崩れ落ちる男、散々考えた末、何の捻りもない言葉を紡ぎ出してしまった自分は、つくづく肉体労働者だと思い知らされる。
「う……」
「………」
少女のリアクションは…全くの無反応。
(何か!何か言わなきゃ!)
グルグルと、色々な考えが男の頭の中を駆け巡り…
「そうだ!
ついて来てくれるなら…
コレを上げよう!」
先日、焼肉屋で食べた際に貰った飴玉を、ジャ〜ンとポケットから取り出す。
「………」
僅かに、少女が目を見開いた。
「………」
(や、やってもうたーっ!)
心の中で男は絶叫する。
初対面の少女を、飴玉を餌に連れ去る等…不審者以外の何者でもない。
というか、今時こんな手を使う誘拐犯なんているのだろうか…。
「………」
「………」
「………?」
少女は相変わらずの無言…だが、先程とは少し違う。
男の目だけを見ていた少女の瞳が、男が持つ飴玉に、釘付けになっている。
(こ、これはもしかして…いける!?…かも)
心の中で、男はニヤリとほくそ笑んだ。