机の上に広げられたファイルの束の中から、貫は“それ”を見つけ出す。
「これは……」
「ん?面白そうなのがあったか?」
「……はい、どうやら警護の依頼のようです」
「警護〜?
地味だな、つまらん
却下だ」
「いえ、そうとも言えませんよ
ただの警護ではないようですから」
「……なに?」
「予告状が届いたようですね、あの“怪盗ジャム”から」
「怪盗……ジャム?
なんだそれは?」
「え〜〜!所長、知らないのぉ!?」
「所長、新聞位読みましょうね」
「俺ですら知ってんのによ」
「む……そんなに有名なのか?」
「ええ
最近、巷を騒がせている怪盗ですよ
詳しくは……綾瀬さん、お願いできますか?」
コクン、と首肯し、両手で持っていたコーヒーカップを机に置き、人差し指を立て立ち上がる。
「説明するです!
怪盗ジャム……三ヶ月程前に突如現れた“自称”怪盗です
必ず盗む前に予告状を送り付けて来ますです
盗む品に共通点はなく、また、今まで失敗したことはありません
正体不明、神出鬼没、謎のベールに包まれた人物です」