響子が一瞬チラリと見た男・大塚亮は、ある建物を物色していた。

その建物の名前は、綾瀬食品研究所。

依頼を受けたら即実行。

早速今夜忍び込むことを決めた亮は、事前に下調べをしに来ていたのだ。


「パッと見普通なんだよな、なんだか楽にやれそうだが…
ま、念には念を…」

バッ!と、堀田貫から受け取った、研究所の見取り図を開く。

監視カメラの配置まで書かれている優れ物で、一体、彼がこれをどこから手に入れたのかは不明だ。

「ふ〜ん
目的の部屋はここだから…あっこから入って…
いや、あっちのがいいかな?」

見取り図と、実際の建物を見比べて、一人であーだこーだ言う亮。

「………
………
…うん、よし決定!」

潜入ルートが決まったようだ。

とりあえずの役目を終えた見取り図を、豪快な見た目とは裏腹に、丁寧に几帳面に折りたたみ、ズボンのポケットにしまう。

「今夜行くぜ…
どんな奴かは知らんが、待ってろよ」

クルリと踵を返し、一旦自宅へと向かう亮。

潜入は、今夜だ。