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ここは、都内の某喫茶店。
洒落た雰囲気の店内と、そこそこに味がよく値段も手頃なサンドウィッチが自慢のお店。
ワイワイと、家族や恋人友人と、大勢の人が楽しい時間を過ごしている中で。
一人、ポツンと席に座り、コーヒーを啜っている男がいた。
小柄でやや猫背、額が広めなデコッパチの上に黒い短髪。
顔は…カッコよくもなければ不細工でもない普通の顔、キョロッとした丸い眼が小動物を思わせる。
ネクタイを外したネズミ色のスーツ姿、やや痩せ気味の体格は、余り筋肉は付いていない。
誰かとの待ち合わせをしているのだろう、先程からチラチラと、さりげなく腕時計を見ては、ため息をついている。
彼が入店してから、既に1時間が経過していた。
「………遅かねぇ
もう30分も過ぎとるバイ」
一人ごちる男、逆算するにこの男は、約束の時間から30分前にここに来ていたことになる。
男が少し苛立ちと不安を感じ始め、コーヒーのおかわりを頼んだ時…
カラララン
「いらっしゃいませ〜!
お客様お一人ですかぁ〜?」
店の看板娘の元気な声が響く。
「いや…連れが来ている筈………あ、うん、いた」
一人の男が店に来た、そして、男は迷わずに、先程から一人でいた男の元へ歩いて行く。
ようやく、待ち人来たれりというわけだ。