「一度、外の世界に羽ばたいてみるといい
高過ぎる能力の制御の仕方も、いずれは身体で覚えるだろう
さぁ行きたまえ!
後悔は何も生み出さない
君は、君が奪ってしまった命の分、生きる義務があるのだ」
「………義務」
「あぁ、そうだ
君の亡くなった友人の為にも…
【君は君の好きなように生きるんだ】」
「っ!」
男の最後の言葉は、無気力に包まれていた少女の脳髄を刺激し…、長らく使わなかった足に、立ち上がらせることに成功した。
「今は、何も考えずに旅立つといい
なに、【いずれ君には働いて貰う、その時は、私の言うことを聞いてくれ】」
少女は無言で首肯し、ゆっくりと立ち上がった。
「まずは…、思うように生きるといい」
少女はまた無言のままで部屋を出た後、思い立ったかのように足を止め、部屋の中に一人残る、男の方を振り返る。
「…どうした?
立ち止まるな、前へ進め」
「………うん
けど、最後に一つだけ…
私、アナタに凄く感謝してる…
絶対アナタのことは忘れない…
だから、あなたの名前を聞かせて欲しいの…
あるんでしょ?私と違って…」
「名前…か
私という存在を定義付ける言の葉…
本来ならおいそれと口にすべきではないのだが…
よかろう、広い世界に旅立つ君の手向けとして、君に私の名を贈ろう
私の名は………」
………