二人きりで部屋に入る響子と組長、部屋の中には、一枚の布団が敷かれていた。

「じゃ、裸になって横になってくれ」

「へい」

全裸で布団の上に横になる組長。

「始めるぞ…」

「へい………あ…」

巧みな指使いで、全裸の組長を攻める響子。

これは、『A』のメンバーにも秘密な、響子の裏の仕事だ。

どこからか、響子の腕前を聞きつけた藤木組長が響子を指名し、週に数回、こうして夜に二人きりで会っているというわけだ。

………

それから、二人が部屋に入って2時間が経過した…。

「よし、今日はおしまいだ」

そう言って、ピシャリと背中を叩く響子。

「いっ!…つぅ〜……」

彫りたての背中を叩かれ、苦悶の表情を浮かべる組長。

「ハハハ、組長なんだろう?
それ位我慢しろ」

響子の持つ高い芸術性は、入れ墨という分野にも、その力を発揮していた。

面白そうだからと始めた彫り師稼業だったが、今では指名が入る程の超売れっ子に彫り師になっていた。

「ああ、そういや組長、花山組の件、助かったよ」

「なぁに、あすこは前々から、鼻持ちならねぇ連中でしてね、いつかは…と思ってやしたんで
渡りに船ってやつでござんすよ」

「そうか、まぁなんにせよ助かったからな
今日はタダ働きで構わないよ」

「そうですかい?じゃあ、お言葉に甘えさせていただきやす」

組長の言葉を最後まで聞かずに、片手を上げひらひらと、響子は別れの挨拶を済ませ、屋敷から出て行った。

「お疲れ様です
…お宅までお送りさせて頂きやす」

「あぁ、頼むわ」