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会社を後にした響子の前に、いかにもな車が停まる。

「お迎えに上がりやした!
どうぞお乗り下せぇ」

中から出て来た男は、これまたいかにも、といった外見だった。

「時間ピッタリだな…」

響子は臆することなく車に乗り込み、我が物顔で煙草を吸い出す。

車が向かった先は、まるで武家屋敷といった様相の家だった。

よく手入れされている松のある純日本庭園に、強面の構成員達。

そう、ここは八九三の家。

それも、日本最大級の組の組長の家だった。

「こるぅえは先生…
ようこそ来て下すった」

ドスの効いた声で響子を迎えるのは、関東最大の組、藤木組三大目組長・藤木大介(フジキ ダイスケ)その人だった。

器量よし、腕よし、度胸よし、と、三拍子揃った立派な八九三で、若くして組を継いだ新鋭の組長だ。

業界では“昇り龍”と持て囃されている。

「よぉ、はるばる来てやったんだ…
茶菓子位は出るんだろうな?」

組長に対しても、全く普段通りに接する響子。

「そるぅえは当然です…
オイ!茶菓子を用意しるぉ、テメェら!」

「へい、親っさん!」

パタパタと廊下を走る子分達。

「時間が勿体ないしな、早速始めようか、親分」

「へい、よるぉしく頼んまさぁ」