………
その後、車内で二人でパンを食べる。
天気がいいので外で食べようという匠の提案は…
「暑いからヤダよ、バカ」
と、響子に一蹴された。
響子は菓子パンの味に舌鼓を打ち、匠はゴーヤジャムの味にボディを打たれた。
目を白黒させる匠を指を差して、思うさま笑った後、響子は車を、行きつけの銭湯へと向かわせた。
◇
「こんにちは!親父さん
今日も頂きに来たよ」
番台の親父に挨拶をしながら、百円玉を3枚、五十円玉を1枚、十円玉を6枚、番台にバン!と置く。
「………ん」
正に頑固親父!といった見た目の親父は、僅かに一言返事をする。
この街に住み始めて以来、ちょくちょくここに通っている響子であったが、この親父が「ん」以外の言葉を発しているところを見たことがない。
「おう…空いてるな」
脱衣所に入っての響子の第一声である。
昼間から銭湯に来る人は少ない、この時間からここにいる客は、余程の風呂好きということで、響子の他には、年配の方が二名いるだけだった。
脱衣所に入るなり、あっという間にスッポンポンになる響子。
脱いだ服はロッカーに、身体を全く隠したりせず、パーン!とタオルを肩に叩き乗せ、堂々と浴室に入っていった。
ちなみに、匠は車の中でお留守番だ。
ゴーヤジャムが彼に与えたダメージは殊の外大きかったらしく、座席を倒し、車内で横になっていた。