「さてと…そうなると、今のまま名前がないというのは不便ですね」

「鷹………」

「え?」

「私も鷹がいい」

「いやいや!それは流石にちょっと…」

「………じゃあ、タカさんが名前付けて…」

「ええっ!?
いや…その…私は本当に、ネーミングセンスがなくてですね…
っと、そういや…
あの少年、名前を聞いていませんでしたね…」

「そういえば…
でもまぁ、いつかあいつには会える気がする」

「…フ、そうですね
私もそんなような気がします…」

「………
話…はぐらかさないでよね」

「う゛」

「私、タカさんが付けた名前以外は嫌だからね」

ズイと顔を近付けて、少女が頬を膨らませる。

「う………
そ、そうですね…
名前は…そうだ、おいおい付けることにしましょう
と、とりあえず、私の国に行きましょうか」

ハンカチで冷や汗を拭い、男は歩き出す。

「…うん、名前、絶対だからね!忘れないでよ」

その後ろを、少女がチョコチョコと小走りでついて歩く。

「アハハ…な、なんとか頑張ります」

男は苦笑した。

「………♪
ね、タカさんの国に行ったら、“みかん”たくさん食べられるよね?」

「蜜柑ですか?
フフ、そうですね」

「やった!
あ、後アレ!
“もも”!“もも”も食べたい!」

「ええ、いいですよ…
“桃と蜜柑”…ですね
約束しましょう」

男はエレガントな笑みを浮かべ、少女に手を差し延べる。

少女はその手を掴み、二人は公園を後にした。

………