「タカさん、私も…一緒に行って…いいかな?」

男の方へ踵を返し、少女は小首を傾げた。

「勿論、いいも何も…私が提案したんでしょ?」

男の言葉を聞いて、パァッと少女の顔が明るくなる。

何かから、今まで背負っていた何かから解放された彼女の笑顔は、とても眩しかった。

「髪、向こうに着いたらキチンと切り揃えましょう
メイドになるわけですから、身嗜みを整えませんとね」

「前聞いた時も思ってたんだけど…メイドって何?
燃えるのが仕事なの?」

「あ〜〜〜
“萌え”の概念は非常に説明しづらいですね…
まぁ、メイド云々関係なく、女の子ですからね
オシャレには気を使うべきですよ」

そう言って、少女の髪に何かを差し込む男。

「………これは?」

「桃の花です、前言った
偶然木を見付けたんですよ、残念ながら実は成ってなかったんですけど…
花は咲いていましたから、簪(かんざし)にしたら貴女に似合うかな、と思って…
花だけ摘んで来ました
ハイ、鏡どうぞ」

胸ポケットから取り出したコンパクトを、ハイ、と開いて見せる。

「………」

マジマジと鏡を見つめながら、ササッと髪を触る少女。

「………あ、ありがとう
タカさん」

少女は、頬を自分の髪と同じ色にして照れながら、男にお礼を言った。