「私は、これから自分の国に帰りますが…
貴女はどうしますか?」
少年の背中を見送った後、男は少女に問い掛ける。
「………」
「前言った件…考え直しては貰えませんか?
――私と…一緒に行きましょう」
「………私は…」
少女の頭の中で、様々な考えが駆け巡る。
今までのこと。
これからのこと。
自分がしたいこと。
自分にやれること。
そして、かつて自らの手で殺めてしまった、唯一無二の親友のこと。
「………ゴメン」
「………そう、ですか」
「ゴメンね、私…いっぱいいっぱい考えた…
私、自分は幸せになっちゃいけないって思ってた…
貴女のことを背負って、死ぬまで戦場で生きていくこと…
それが…償いだと思ってた…」
「………?」
「でも……私………
私…タカさんと一緒に行きたい」
「!」
「ゴメンね……
でも…私、そろそろ前に進むね…」
少女の謝罪は、男に向けられたものではなく…。
少女は、公園内でやや崖になっている場所へと歩いて行き…
「No.00524…ううん
名前も知らない、私の初めての親友
貴女のことは、一生忘れない…
ただ、貴女に縋(すが)って生きるのは…もう…やめます」
そう言って、少女は腰に下げたアーミーナイフを右手に取り…
左手で髪を束ね、バッサリと、髪を切り落とした。
「バイバイ…
今まで…ありがとう」
握り締めていた髪をフッと手放す。
桃色の髪達が、風に乗って散り散りに飛んで行く。
その様は、まるで桃色の花の開花の様。
自由になった花弁達は、フワフワとどこまでも、どこまでも飛んでいった…。