………
「…ん、ごちそーさま
――じゃ、俺はここでお別れだ」
少年が沈黙を打ち破る。
食べ終えたハンバーガー(のようなもの)の包み紙を、くずかごに投げ入れる。
「…どちらへ行かれるのですか?」
「…ん〜?特に決まっちゃいねぇけど…
武者修行の旅の続きだな…
本当の強さってやつが知りてぇ…
そうだな、中国にでも行くかな」
「中国ですか」
「ああ、中国四千年
武術の本場で基本からやり直すのもいいかな、って
それに、なんか手強そうなのがわんさか居そうじゃん?」
ニカリと白い歯を覗かせる少年。
「…約束でな、世界最強の男になんなきゃいけねぇんだ」
そう言って、所持品が全て詰まったズタ袋を、肩に担ぎ上げる。
右腕には、血で黒く染まったバンダナが巻かれている。
「じゃあな…っと
そういや、手合わせする約束だったよな…」
「………」
「………
ま、今はやめとくか…
次会った時にでも…試合おうぜ」
「ええ、必ず」
「じゃあな、また会おうぜ」
「ええ、また」
男達は固く握手を交わし、少女はそれを見守った。
「………じゃあね」
「ああ、じゃあな」
ズタ袋を持った手と反対の手を上げて、少年は歩いて行く。
こちらを一度も振り返らず進む少年の背中は、まるで父親の背中のようにデカく、そして、力強かった。