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「フハハハハッ!
圧倒的じゃないか!
我が軍はっ!!」
独立軍制圧軍最高司令・ギレル・ドズンが高笑いをする。
彼がいるのは、制圧軍本部司令室。
高いコンクリート塀に守られた広大な敷地、監視カメラと赤外線によるセキュリティシステム、ミサイル迎撃システムを完備した、最高の守りを持つ本格的な基地。
敵国にこんな大規模な基地を建てるという行為自体が、小国の独立に対する、大国の明確なアンチテーゼに他ならない。
「ナパーム弾投下地点の各距離実に10以下…
生存者はまずいないでしょう」
現場の最高指揮官であるソンクソン大佐が、ギレルにそう告げる。
「フン、これでようやく、あの目障りな基地が無くなったわけだ…
なぁ、ソンクソン君、これでもう、制圧に手間取ったりはしないだろうね?
最新の“猫”まで使ったんだ、もう、敗北は許されんぞ」
“猫”とは、独立軍第2前線基地を焼き払った、ジェット戦闘機“トム・キャット”のことだ。
「サー!イエッサー!」
背筋を伸ばし、ソンクソン大佐は力強く敬礼を捧げた。
「フフン」
満足げにギレルが鼻を鳴らすのと時を同じくして、誰かが司令室の扉をノックする。
コンコンコン
「入れ」
「失礼します、サー」
兵士が一人司令室に入って来た、無表情を崩さない、実に軍人らしい兵士だ。
「何用だ?」
「ハ、報告であります
敵が攻めて来ました」
「なに?
フン、仲間の敵討ちか
殲滅しろ、数はどれくらいだ?」
「それが…ジープ1台
敵兵は僅かに四人です」
「なに?!
………なるほど、特攻か
死ぬ気だな…侮れんぞ!
全力で当たれ!
自爆するかもしれん、気をつけろ!」
「サー!イエッサー!」
伊達に最高司令の地位についてはいない、浅慮なソンクソン大佐とは、このギレルという男、些か格が違うようだ。