………
どれだけの時間を戦っていたか。
戦力差は明らかだった。
増えていく傷…
流れ出る血液…
霞む視界…
ただでさえ先輩である上に、更に同期の中でも優秀な彼女、No.00524を相手にしては、少女に勝ち目にはなかった。
大量の出血は、少女の生命活動を著しく弱め、脳はキンキンと、危険を報せるシグナルを鳴らし。
その時、少女は自分の死を確信した。
ドクン…
“それ”は、生来備わっている動物としての防衛本能か…
ドクン…
はたまた少女の内に眠っていた野性の遺伝子か…
ドクン…
「っ?!」
ドクン!
「あ…あ……」
“それ”が何なのかは、当の少女本人にもわからなかった、が…
ドクン!ドクン!ドクン!…
「あぁ!…あ…」
………!!!
「ああああああぁぁぁっ!!!!」
“なにか”が、少女の身体の奥で爆ぜた。
突如として漲ってくる力…、身体の底から沸き上がって来る何かの力を、抑えられない。
今戦っている相手が誰なのかなんて、もうその時、少女の頭の中から、綺麗に消し飛んでしまっていた。
迫り来る銃弾がスローモーションに見える。
軽く走ったつもりが、遥かに想定外の速さを脚が生み出す。
圧倒的に全ての身体能力が、常人とは違う自分の身体。
突如として備わった超々能力に、少女は完全に酔いしれた。