「兵士としての仕上がりはわかった…
それよりも、肝心の“例の件”の方はどうかね?」
「それが………芳しくありません
どの個体も、成人男性スポーツ選手の平均身体能力を遥かに上回る数値を有しているのですが…
残念ながら、訓練によって到達できるレベルです…」
「通常の10倍…とまではいかんか」
「はい、残念ながら…」
男は部下からの報告を聞き、眉間の皺を更に深くした。
不機嫌そうな顔付きで腕組みをし、モニターを睨み据える。
「………!
…この娘は?」
モニターに映る訓練生――彼らにとっての製品――その内の一人を指差す男。
「ええ…と、それはNo.00679…ですね
能力値は他に比べ平凡なものですね…
とりたてて特筆すべき点はないようですが…
No.00679が何か?」
「この娘の髪の色…確か初めからこの色ではなかったろう?」
モニターに映る少女、その桃色の髪を指差し、男は低い声でそう問う。
「髪…ですか?
え〜っと………はい、そうですね
初めは黒…ですね」
少女の訓練している画像のすぐ横のモニターに、少女がここに来た当時の写真が映し出される。
「クツクツクツ
やはりな…
桃色の髪等、通常では有り得ない
これは…遺伝子組み換えが成功した証に違いない」
「っ!
な、なるほど!
確かに…早速調べてみます」
「クツクツクツ
これは…ようやく成功したかもしれんな…」
心底楽しそうに、子供のように無邪気に笑う男。
「《能力限界突破(オメガ・ビオメハニカ)》…
この特殊技能を、遂に実現させられるか…」