◇
「ね!ね!タカさん!
何コレ!?」
「それは…ドリアンですね
果物の王様とか呼ばれています」
「王様?!凄い!」
「ハハッ、可愛らしいお嬢ちゃんだな…
一口食べてみるかい?」
悪人面の果物屋の親父が、ニコニコと営業スマイルでそう言う。
「いいの!?
食べる食べる!
………ウワ臭っ!
三日間洗ってない靴下の匂いがする〜」
「ハハハ…まぁ匂いはそうだが、味は確かさ
騙されたと思って食ってみな」
「…ホントにぃ?」
「ホントホント!」
キャッキャとはしゃぎながら買い物をする少女の姿は、歳相応な少女のソレであった。
「………あ」
(…笑った)
男はこの日この時、始めて少女の心からの笑顔を見た。
天真爛漫に笑う彼女の笑顔の、なんと眩しいことか。
その笑顔が良過ぎるが故に、男は尚更少女の過去が気になってきた。
何故彼女は、心を閉ざしてしまっていたのか…。
浮かび上がる疑問を消すことはできなかった。