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正直、何がなんだかよくわからない…というのが、独立軍第二基地司令、ミゲル・バルドの現在の心境であった。
夜襲を仕掛けて来たと思えばすぐ撤退。
戦車が出て来たと思えばすぐ同士討ち。
一体、この一連の騒ぎはなんだったのか、イマイチ要領を得ない。
しかしてその実際は、三人の傭兵の働きによっての奇跡の撃退劇だったのだが。
ギャリギャリギャリ
少年が上に乗っかった、1台の戦車が、基地へと近付いて来る。
中には、男と少女の二人。
二人は大胆にも生身で接近して、1台の戦車を強奪、男が操舵手を、少女が砲撃手を担当し、敵戦車隊を駆逐した。
ギャリギャリギャリ
「…ねぇおじさん
アンタ何者?
同じ性能の機体同士で、こうまで一方的に…」
「おや、貴女の方から話し掛けて来るとは…嬉しいですね」
男は嬉々として無邪気に笑った。
「貴女が砲撃を担当したからの戦果ですよ
私一人ではこうはいきません」
それが、心からの、本心からの一言であることが、少女に伝わって来た。
「………
ねぇ、名前…なんていうの?
“あるんでしょ?”教えてよ」
「名前…ですか?
う〜ん、そうですね…
いえ、それは、この戦場を生き抜いた後のお楽しみとしておきましょう」
男は両目を閉じ、なにかに想い馳せている、それがなんであるのか、今の少女には知る由もなかった。
「昔、傭兵をしていた時に呼ばれた名前で、今は勘弁して下さい
“黒鉄の鷹”、そう呼ばれていました」
「…くろがねの…たか」
「…そういう貴女は、なんてお名前なんですか?」
「っ!
私………
…名前なんて………ない」
「………ない?」