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「ぬおぉぉりゃあぁぁ!」
戦車に密着して力任せに持ち上げて、まるで将棋の駒のように一気にグルンと裏返す。
「…ふぅっ、やっと2台目か」
絶大な戦闘力を有する少年も、流石に戦車を相手にしては苦戦を強いられていた…。
通常の銃弾と違い、戦車の砲撃は、かなり大きく避けないと当たってしまう。
更に、戦車隊の完璧に統率の取れた動き、機銃で逃げ場なくしてから、主砲を撃って来る。
いかな百戦練磨の少年でも、すぐに撃退というわけにはいかない。
それでも尚、2台の戦車を素手で倒す辺りは流石の一言。
また、対戦車武装と対人武装の二つを戦車隊が同時に使用してきたことは、少年が、戦車以上の戦闘力と、通常の人間よりも遥かに優れた敏捷性を持つ証でもあった。
数が減るにつれ楽になるとはいえ、一発でも貰えば即ゲームオーバーという状況は変わらない。
少年にとっては、依然気が抜けない戦いが続く。
――その時だった。
「!」
戦場を駆ける二人の人影を、少年は目撃する。
あまりに速く移動していた為、少年の動態視力でも確証はない、確証はないのだが、ただ、微かに見えた。
ブラックとピンクのコントラスト、心当たりがある人物は、あの二人しかいない。
その後、1台の戦車の動きがピタリと止まり…
「………?」
キリキリキリ、と緩やかに砲身を僚機に向け、その隙だらけのドテッ腹に、主砲を容赦なくブチ込んだ。