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「戦車と肉弾戦なんて…
何考えてんの、あいつ、馬鹿じゃない?」
見張り台に立つ少女が、面倒くさそうにそう呟く。
「戦車…ですか
なかなか面白い展開になって来ましたね…」
タキシード姿の男が、白手袋を着け直しながらそう言う。
「行きましょう」
「行くって…どこに?」
「決まっているでしょう?
私一人では砲撃まで手が回りませんから、一緒に来て下さい」
少女の腕を掴み、引っ張る男。
「あっ、ちょっ、ちょっと」
「いいから、行きましょう
たまには、彼のように馬鹿になってみるのもいいものですよ?」
「!………」
ニコッ、と、男が見せたエレガントな笑みを目の当たりにして。
そして、久しぶりに感じる他人の体温に、少女は、何も言えなくなってしまった。
それは俗に“照れる”と言われる感情なのだが、少女には理解できなかった。
まるで手を繋いだ恋人同士のように、男と少女は二人並んで、見張り台から下りていった。