「へへっ、泡喰って逃げやがった…
ま、数だけ多くても俺の相手じゃねぇわな」
少年が勝ち誇った顔で一人佇む。
「………まぁ、お節介な誰かさんが援護してくれてたみたいだけどな…」
戦場に残された幾つかの死体、それらの死因は明らかに少年による打突ではなく、何者かの放った銃弾によるものだった。
少年は多勢に無勢という状況でありながら、それでも誰一人として命を奪ってはいなかった。
それだけの手加減ができる余裕があったのだ。
…ギャリギャリギャリ…
「とりあえず、今回は俺達の勝ち…かな?」
…ギャリギャリギャリ…
一度大きく伸びをして、基地に帰ろうとした少年の足が止まる。
ギャリギャリギャリ
「………このキャタピラ音は」
ギャリギャリギャリ!!
「な、戦車か!?」
少年は目を疑った、まさか、こんな民家紛いの基地を制圧するのに、12台もの戦車を投入して来るとは夢にも思わなかったからだ。
一時の撤退をしたとはいえ、これで終わる大国軍ではなかった。
「へへっ、こんだけ大人げない真似を平気でして来るなんざぁ…
どんだけ面の皮が厚い奴が指揮してやがんだ?
おもしれぇ…必ずとっ捕まえて、絶対ぇ面拝んでやる!」
顔を両手でパンパンと叩き気合いを入れ…
「うおっしゃあぁ!!」
少年は、臆することなく全力疾走で、戦車隊に向かっていった。