少年は、己を鍛練することを日課としており、この日も基地の敷地内で、一人トレーニングに明け暮れていた。
その最中、不自然に気配を消しながら近付いて来る謎の存在に、こちらは完全に気配を消し近付き、そして、遭遇したというわけだ。
「グッ!」
阿門――首の裏側の急所――を叩き気絶させる少年。
格闘訓練もみっちりと受けている精鋭達数名を、少年はものの数秒で全員気絶させた。
「な、なんだコイツ!?」
「弱………
いや、俺が強いのか」
「くっ…いくぞ!
全員で同時にかかれ!」
「お〜お、そうこなくっちゃ…
いらは〜い」
右人差し指のみで挑発をする少年に、兵士達は一斉に跳び掛かる。
武道の概念に、“制空権”というものがある。
己が手足の届く範囲のことをそう呼び、制空権内を完全に支配してさえいれば、敵の攻撃を受けることは絶対にないのだ。
少年は、同時に襲い掛かって来る兵士達を、制空権を侵した者のみを冷静に見極め、確実に、そして順番に迎撃していった。
ほんの一分後、大地に両の脚を踏み締めて立っていたのは、少年ただ一人だけであった。
勝敗を決めたのは、実に単純な理屈。
純然たるスピード&パワー、その性能のあまりの違いは、数の差を補って余りあるものだったのだ。