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闇に乗じて基地へと接近して来る、大国の先兵。
独立軍第2前線基地は、基地とは名ばかりで、その実、警備システム等望むべくもない、単なるコンクリートの塀に囲まれただけの民家の集合体だ。
最新最強の装備を兼ね備え、更にスネーキング(潜入)の特殊訓練を施された兵隊達にとっては、砂上の楼閣に等しかった。
着々と距離を詰めて来る兵隊達、彼らにとってはいつも通りの簡単な仕事、の筈だった。
「、っ!」
突然、先兵の一人が頭を撃ち抜かれた。
警戒を強める先兵達。
だが、確実に不意をつかれ、音もなく狙撃された為、敵スナイパーの位置が掴めない。
「、っ!」
「、っ!」
身を物影に隠すも、第2、第3の犠牲者が出る。
居場所が悟られるのを避ける為、死ぬ瞬間も声を上げない辺りは流石ではある。
が、元々一方的に狙撃されているのだ、今更声を上げようが上げまいが、正直状況は変わらない。
為す術もなく狙撃され続ける精鋭達、特殊訓練を受けた兵を、手玉に取り続ける少女。
まだ少女という歳頃でありながら、常勝の精鋭達を仕留め続ける驚異のスナイピング技術。
彼等の仕事は、本隊が辿り着く前の、斥候と撹乱。
某かの情報を持って帰らなければ、斥候の意味がない。
が、かと言ってスナイパーに背中を見せるのは、危険過ぎる行為だ。
退路はない、遂に彼等は、無理矢理な突入を強いられることになった。