少年は自分の腕にできた痣を見つめ…
「アンタ…かなり強ぇな」
「…私が?
…さぁ、どうでしょうね」
「へっ、とぼけやがって…
いつか、アンタと手合わせしてぇな…」
「この仕事が終わった後にでも、機会があれば受けましょう」
「おっ、言ったな!
絶対だぞ!」
「ええ、覚えておきましょう」
「………」
二人のやり取りを無言で見ていた少女は、プイとそっぽを向き、スタスタと歩き去っていった。
「………あ〜〜〜〜〜…
もういいかな?
そろそろ仕事について貰っても…」
独立軍第2前線基地責任者ミゲル・バルドが、待ちくたびれたといった様相でそう言った。
「あ、最後に一つ確認が…」
タキシードの男がそう言うと…
「………ハァ〜、なんだ?」
と、深いため息をついた後、ミゲルはそう聞き返した。
「私達が今話してるのは英語ですよね?」
「………他の言葉に聞こえるのかい?」
「いえ、ただ…話してる言葉は英語でも、表記が日本語だということを確認しておきたくてですね…」
「?確認?」
「ええ、別に英語の文章が書けないわけじゃないんですよ?
ただ、いちいち和訳載せるのも面倒ですし…第一場所取りますからね」
「??言ってることがよくわからんのだが…」
「ああ、いえ、気にしないで下さい
こっちの話ですから…」
「???」
「………ケッ!
いけ好かない野郎だぜ!」
タキシードの男を見ながら、スペックは地面に唾を吐いた。
――その後、各々配置を聞き、それぞれの持ち場に着き、基地の防衛を開始した。
…それから数日間は、驚く程平穏で、一度も戦闘は起こらなかった。
ただ少年とスペックが、最低一日一回は衝突していたことを除いたら、だが。