「な、何を根拠に…」
「すまないが、君のことは調べさせて貰った」
「えっ?!」
「依頼人の素性を洗うのはいつものことでね…
まず依頼人のことを調べてから、それから仕事に掛かる
吉村淳美一人を調べるのに、ヒメが二日も掛かる筈ないだろう?」
新しい煙草を取り出し、火を付ける。
「君が本格的に絵を描き始めたのは、中学の頃に母上と死別したのがきっかけだな?
生前、君が描く絵が好きだと言っていた母上の為に、画家の道を目指した…違うかな?」
「……参ったな…
どっから調べて来たんです?」
「ヒメの情報収集能力を舐めて貰っては困る
……で、だ
そして今回もまた、君は、孝行する前に亡くなってしまった父上と、志半ばで潰(つい)えた兄上の想いを叶える為に、会社を継ぐという道を選んだ…」
「………
確かに…
確かにそうかもしれません
でも、それがいけないことですか!?
亡くなってしまった人の想いを継ぐ事は、間違っている事ですか!?」
「間違ってなんかいないさ…
それ自体は間違っちゃいない…
…ただな、優先順位を間違えちゃいないか?ということだ」
「………優先順位?」