………
大会社・吉村カンパニーの社長邸で一夜を過ごした5人…朝食を食べ終えた後、匠が煎れたコーヒーを飲んでくつろいでいた。
「いやぁ〜凄いね!
何?!
この大豪邸!!」
「デカけりゃいいってもんじゃないです
この成金」
「アハハ…確かに、僕も住んでて落ち着きませんよ」
「………」
明らかに、どこか様子がおかしい健二郎を、怪訝そうな顔付きで見つめる奈津子。
「………さてと
………奈っちゃん、ちょっと話あるんだけど…いい?」
「………うん」
ガラッと音を立て、椅子から立ち上がる二人。
そのまま、二人だけで部屋を出る。
………
中庭に出て、足を止める健二郎。
「なぁに?話って…」
「………コレ…渡したくて」
「?…コレは?」
「飛行機のチケット、パリ行きの…」
「?!」
「いつかさ、二人でお金貯めて、パリに行こうって言ったの、覚えてる?」
「…うん
私はお菓子作りの…
二郎君は絵の勉強を…
それぞれやりに、一緒に行こうって…
でも、どうしたの?いきなり
それに、このチケット…」
「会社のお金をちょこっと……ね
これくらいなら…次期社長なら許されるでしょ」
「…どうするの?
………二人で、パリに逃げようってこと?」
「………いや
チケットは…1枚しかない…」
「え?どういう…」
「〜〜〜………
…山田奈津子さん
すいません、あなたとの結婚は、なかったことにして下さい…」
深々と頭を下げ、健二郎はそう言った。
「………
………
………え?」