ふと、目を覚ませば、窓から差し込む明るい日差しが目に入った。
「ん……ハチ…?」
昨日の気だるさからは一変。頭の痛さもなくなり、熱も下がっているようだ。
ただ、少しだけのどが痛い。それに、若干鼻声だ。まぁ、それは仕方ないか。
ベットの脇にある小さなテーブルを見てみれば、真っ赤なリンゴがポツンと置いてあった。
その近くには、ペンで書いたであろう、汚い字で"食べて"と書かれた紙もあった。
「ハチー……?」
ハチじゃないんだから、朝からリンゴは食べないよ。そう思いながらも、辺りを見渡してハチを探す。
…………いない。
いつもは呼んだらすぐにヒョコッと出てくるのに、今日は反応なし。昨日は近くにいたのに…
「ハチー!」
とりあえず、大きな声で叫んでみる。もしかしたら出てくるんじゃないかと思った。
でも、全く反応なし。
家の中はシーンと静まり返っていて、こんな静けさは久しぶりだった。
「いないのか……」
いつもいるのが当たり前だったから、いなくなるとどうしようもなく寂しい。
あぁ、ハチがいないとこんなに静かなんだ。
ハチが来る前は、こんな中で生活していたんだ。まだ1ヶ月も経ってないのに、昔のことのように感じる。