「ん……ハチ…」



再び海の口から出た俺の名前に、動きを止めてしまった。



頭では分かっていても、体が動こうとしないのは何故?




その時、寝ていた海の顔が歪んだかと思えば、キラキラ光ったものが目尻を滑り落ちた。




「っ何で泣いてんだよ…」



ポタポタ零れる涙が、枕を濡らしていく。




「……っ…死にたくないよ……」



海の口から出た本音。


聞かなければよかった。



――――――カラン カラン…



手から滑り落ちた鎌が、音を立てて床に転がった。



「ダメだ…っ」



たった一言、聞いてしまっただけだというのに。




俺には出来ない。


特別な感情を持ってしまったから。







俺には





この子を殺せない。