「怖くないってことはないけど…、死ぬ運命なんだから仕方ないでしょ。今更どうこう出来る問題じゃないことはよく分かってるし…」



確かに、今更運命を変えることなんて出来ない。



「…なんか殺しづらいなー…」



そう小さな声で呟いた言葉は、海の耳には届かなかったようだ。




「え?何か言った?」



「…いや…なんでもないよ」



一瞬不思議そうな顔をした海だったが、すぐに「そっか」と言ってキッチンの方へ行ってしまった。



何となく、本音をあんまり言わない子だなって思った。



「ハチー、アップルパイあるけど食べる?」



「食べるっ!」



まぁ、優しいからいっか。



死神に本音をベラベラ喋るのも、逆に変だと思うし…



それに……、海の思い出には楽しいことなんてほとんど残ってないんだよなー…




「はい、クリスマスケーキの代わりね」



「あぁ、だからケーキ買わなかったんだ」



俺に気を遣ってアップルパイにしたのか?


それとも、自分が食べたかったから?



どっちにしても、変わった子だ。