「ただいま」って、あたしが言ったときに「おかえり」って、返事が帰ってくる。それが何よりも嬉しかった。
返事が返ってくることって、幸せなことなんだって。返してくれる相手がいるとって、幸せなことなんだって。
だから追い出せなかった。
あたしの魂を貰いに来ただけだったけど、あたしにとっては、家であたしの帰りを待っててくれる人だったから。
「嬉し泣きでもするかと思ったのに」
「泣かないよ。もう泣かないって、ハチと約束したから。ほら、心配かけちゃいけないし、ずっと笑ってなきゃね!」
小さい頃に両親を亡くして、あの日から心にポッカリ穴が開いたみたいだった。気づかないフリをしていたけど。
それももう、なくなったよ。
いつの間にかなくなっちゃってた。
ハチとイブのおかげ。
「海、退院したら、アップルパイでも食べようか」
「食べる!」
ハチは、俺のこと忘れないで、って言ってたけど、忘れるわけないよ。この先何年経っても、何十年経っても、あたしの一番はずっとずっとハチだから。