"美弥ちゃん、だっけ?"


"美弥…?美弥がどうしたの…?"


ハチは何度か一方的に美弥に会っている。美弥はハチのことを知らないけど、ハチは知ってるんだ。


"あの子、海の近くに俺とイブがいたこと、何となく気づいてたみたいだよ"


"美弥が…っ?"


美弥に霊感があるなんて、聞いたことがない。そんな素振り見せなかったし、何も言ってこなかったもん。


"霊感があるわけじゃないみたいだけど。よっぽど海のことが大事なんだろうね"


"……うん、家族みたいなもんだし…"


"俺からも頼んどいたから"


何を頼んだんだろう。ハチはもう人間界にはいないのに、どうやって美弥に…


"何を…?"


"内緒。……ほら、もう時間だ"


あたしの頭を優しく撫でるハチの手が、後頭部に回った。


"もう泣くなよ?"


"う、ん……っ"


"笑ってる方が可愛いんだからさ"


そしてゆっくりとハチの方へと引き寄せられる。ハチのフワフワの髪が首筋に当たってくすぐったい。


そのままあたしの耳元に口を寄せ


"俺、海のこと、世界で一番大好きだから"


あたしの額にキスをした。


意識が朦朧としてくる。



"愛してるよ…"


目の前が真っ白になって、あたしはそこで意識を手放した…