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あれから、何時間経ったんだろう。辺りはもう真っ暗になってて、少しだけ雨も降り始めた。
ポケットの中で震える携帯が、チカチカと光っているのが分かった。さっきから何度も何度も光っていた。
こんなに何度もかけてくるのなんて、美弥しかいない。きっとあたしが電話に出ないから心配して、何度もかけてくれてるんだろう。
「もしもし…?」
『海っ! よかった、いくら電話かけても出ないから心配してたんだよっ?今どこにいるの?』
あれだけ泣いたのに、また涙が出てくる
もう、無意識だった。
「…海にいる…っ」
『1人なのっ?』
「うん…っ」
『今から行くから、そこにいてね。すぐに行くから!』
立ち上がれないわけでも、歩けないわけでもない。帰ろうと思えば帰れるような状況なのに。
ここを離れたら、もう二度とハチに会えなくなる、そう思った。ハチが消えてからのことは、あたしは何も知らない。
こんなところにいたって、もう二度と会えないことには変わりないのに。分かっていても帰りたくなかった。
ここを離れたくない。
全部、終わっちゃうじゃない。