どうしよう。ハチが消えちゃう…!
あたしの頬に伝う涙を、ハチはそっと拭って
「バイバイ、海」
あたしの唇に、キスをした。
「ハチ……っ」
触れていないことは分かっているけど、確かに感触があった。ハチには体温がないはずなのに温かくて。
あたしのファーストキスを、ハチは意図も簡単に奪っていった。
最初で最後になる、ハチとのキス。
ねぇハチ、ちゃんと聞こえたよ。
"愛してる"
小さな小さなその言葉は、ハチの姿が完全に見えなくなってから聞こえた。
「あたしもだよ…っ」
ハチ、あたしもハチのこと愛してるよ…
一緒にいたときは一度も言えなかったのに。想いを伝えることさえ許されなかったのに。
伝えてしまえば、終わるから。
神様、こんなに残酷な終わり方って、あんまりでしょう?